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ゾウとクジラに学ぶ
- がんから身を守るしくみ

がんは、人にとっても、犬や猫といった身近な動物にとっても、いまなお命に関わる大きな病気です。
一方で、ゾウやクジラは、体が大きく長く生きるにもかかわらず、驚くほどがんになりにくい不思議な特徴を持っています。
本プロジェクトでは、ゾウやクジラが持つ「がんから身を守る特別な仕組み」を科学的に解明し、 人と動物の未来につなげる研究を行っています。

何を研究しているのか

クジラのイラスト — がん耐性動物の代表例。体重100トンを超えながらがんになりにくい
Whale 巨大な体を持ちながらも長寿 中でもホッキョククジラは、200年以上の歳月を生きる。

なぜこの研究が重要なのか?

半世紀以上続くひとつの問い

一般に、体が大きく寿命が長い動物ほど、体の中の細胞数は多くなります。また、生涯にわたって細胞が分裂する回数や、突然変異が起こる機会も増えると考えられます。 そのため、人や犬・猫よりも体が大きいゾウやクジラは、がんになりやすそうに思えます。 しかし、彼らは体が大きく、寿命も長いという、いわば「がんになりにくい」動物です。 この一見不思議な現象は Peto's paradox(ペトのパラドックス) と呼ばれています。

その起点は1975年。英国の疫学者 Richard Peto らが、動物の大きさや寿命と 発がんの関係を考察した論文を発表しました。 半世紀後の現在も、この問いは新しいがん予防・治療の発想につながる研究テーマです。

  1. 約6億年前 多細胞動物の進化 多数の細胞が協調して一つの個体をつくる進化が進み、細胞増殖を制御する仕組みの重要性が高まっていった。
  2. 約5000万〜6000万年前 ゾウ類・クジラ類につながる系統の成立 ゾウ類につながる長鼻類、クジラ類につながる初期鯨類がこの時期に現れ、後の進化の中で大型化・長寿化が進んでいった。
  3. 1975 問いの起点 Richard Peto らが、体の大きさ・寿命と発がんの関係を考察。後に Peto's paradox と呼ばれる問いの起点となった。
  4. 2025 分子レベルの解明へ 本研究室の北野泰佑助教がゾウとヒトのDNA損傷応答の違いを報告。同年、ミンククジラの細胞を利用した研究も進行中。

Sources: Peto et al., 1975 / Kitano et al., 2025 / NOAA Fisheries: Bowhead whale / Encyclopaedia Britannica: Elephant life cycle

ゾウの足跡のイラスト

研究の進捗

  • これまで5年間、ゾウの細胞を用いた研究を継続してきました。
  • 2025年には、DNA損傷応答(DNAに傷がついたときに起こる細胞の反応)が、ゾウとヒトで異なることを報告しました(Kitano et al., Front Vet Sci, 2025)。
  • さらに、アメリカの研究チームは、クジラでもDNAの傷を修復する仕組みに特徴があることを報告しました(Firsanov et al., Nature, 2025)。
  • 現在は、ゾウやクジラがなぜがんになりにくいのかをより詳しく調べるため、ヒト・ゾウ・クジラの細胞を用いた比較研究を進めています。
  • 将来的には、ヒトや犬・猫のがん予防・治療につながる新しい手がかりを見つけることを目指しています。
ゾウの正面イラスト — DNA損傷修復能力の研究対象。5年間の細胞研究でヒトとの差異を発見
Elephant 数トンの体で、約70年を生きる がんによる死亡率は5%未満とされる。

協力

Supporters / ご支援者の皆さま

本研究は、ゾウやクジラが示すがん耐性の仕組みを通じて、ヒトと動物の未来の医療につなげることを目指しています。 ご支援くださった皆さまに、心より御礼申し上げます。 ご希望いただいた個人・団体のお名前を、研究を支える大切な記録として掲載しています。

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